建築設計プラットフォームi-ARM

第32回 天空率に適合する建物形状の考え方

~逆天空率計算の切削方法について~

【概要】

今回は、計画した建物が天空率をクリアしなかったときに、どのように形状変更を行うとクリアできるのか?について考察してみたいと思います。


天空率の基本的な考え方は、「第29回 天空率ってなに?」をご覧ください。


【3つの考え方】

天空率に適合するように建物形状を変更する考え方として、次の3つの方法が考えられます。


①算定点から見た建物の幅を狭くする(左右を変更する)

算定点から見た建物の左右方向を調整する考え方です。天空図を描いた場合、計画建物の投影が描かれている範囲は扇形を成します。計画建物の天空率が適合建物の天空率を下回った場合、扇形のその両端から幅を狭くするような形状変更を行えば天空率は大きくなります。このように算定点からみた扇形で建物の端を削っていくことで適合する形状を検討することができます。この考え方は、厳密にやれば切削量を少なくできますが整形を保ちづらくなる傾向があります。



②算定点から見た建物の高さを低くする(上下を変更する)

算定点から見た建物の上下方向を調整する考え方です。算定点と天球における計画建物の天頂部を繋いだ線を主傾斜とする斜面を考えます。計画建物の天空率が適合建物の天空率を下回った場合、天空図上の建物天頂を低くして形成される斜面と交差しないような形状変更を行えば天空率は大きくなります。このように算定点からみた斜面で建物の高さを削っていくことで適合する形状を検討することができます。この方法は斜線制限に近い考え方で、天空率の効果は僅かになります。



③敷地境界線から見た建物の後退距離を大きくする(前後を変更する)

敷地境界線から見た建物の前後方向を調整する考え方です。斜線制限では、敷地境界線と建物の距離である後退距離に応じて緩和が適用できます。天空率計算時にも、この緩和を使用して適合建物を作成することができます。計画建物の天空率が適合建物の天空率を下回った場合、対象となる敷地境界線から建物までの後退距離を大きくするような形状変更を行えば天空率計算が有利になることがほとんどです。例えば、対象となる道路境界線の壁面後退距離を増やすことで、A.計画建物までの距離が遠くなる(計画建物による天空率が大きくなる)B.緩和により適合建物が大きくなる(適合建物による天空率が小さくなる)という二重の利点が考えられます。この考え方で検討した場合、他の手法と比べて整形的な形状を保ちやすくなります。



【i-ARMでの設定】

i-ARMの建築可能空間コマンドの逆天空率計算では、その3つの考え方で切削方法を選択できるようになっています。

それぞれ下表のような設定となります。

高層型

①の考え方で、指定した位置の高さをできるだけ確保しつつ、形態制限をクリアするような建築可能空間を作成します。

低層型

②の考え方で、建物全体の高さを少しづつ削って、形態制限をクリアするような建築可能空間を作成します。

後退型

③の考え方で、敷地境界線から見た建物の前後方向を調整して、形態制限をクリアするような建築可能空間を作成します。


【まとめ】

どうでしたか?少しマニアックな内容でしたが、天空率計算の仕組みから逆算して考えられる3つの切削方法についてご紹介しました。計画建物の形状を決める参考材料としてお考えいただければと思います。

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