建築設計プラットフォームi-ARM

第23回 天空率計算の後退距離について

~法規:天空率コマンドの壁面後退~

【概要】

今回は少しマニアックに、天空率計算における壁面後退距離について、

法規のおさらいとi-ARMでの設定についてご紹介します。

難しいと感じられる方も、一緒に確認してみませんか。




【後退距離について】

道路斜線の制限は、道路境界線と建物の距離である後退距離(セットバック)に応じた緩和があります。天空率計算では、この建築基準法の道路斜線の緩和を使用して適合建物を作成することができます。

後退距離は、1つの道路境界線から建物までの最短距離となり、道路幅員を後退距離分だけ広くみなすことができます。


道路境界線に沿って塀などがある場合には、後退距離は原則として、塀から算定することになります。ただし例外として、建築基準法の【施行令130条の12(前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定の特例)】より、下表に示す基準を満たした塀や物置などは後退距離算定時に考慮しなくても良いという緩和を使用することができます。

1.

物置その他これに類する建築物

・軒の高さ ≦ 2.3m かつ 床面積 ≦ 5㎡

・前面道路に面する長さ ≦ 敷地が前面道路に接する部分の長さ×1/5

・前面道路の境界線までの最短距離 ≧ 1m

2.

ポーチその他これに類する建築物

・高さ ≦ 5m

・前面道路に面する長さ ≦ 敷地が前面道路に接する部分の長さ × 1/5

・前面道路の境界線までの最短距離 ≧ 1m

3.

道路に沿つて設けられる門又は塀

・高さ ≦ 2m(高さが1.2mを超える部分が網状その他これに類する形状に限る)

4.

隣地境界線に沿つて設けられる門・塀

5.

歩廊、渡り廊下その他これらに類する建築物の部分

・特定行政庁がその地方の気候、風土の特殊性、土地の状況を考慮して規則で定めたもの

6.

建築物の部分で高さが1.2m以下のもの


ただし、天空率計算で用いる計画建物としては、この除外した塀などの部分を考慮しなければいけないことに注意が必要です。


【i-ARMでの設定】

それでは、i-ARMでの天空率計算の後退距離の取り扱いについてご紹介します。

天空率コマンドの「壁面後退」の設定によって指定できます。

それぞれ下表のような設定となります。

最適化

入力されている計画建物形状から後退距離を自動算出した「建物準拠」から後退距離を「考慮しない」の間で適合建物による天空率が最も小さくなる(建築する側に有利な)位置を自動で探します。

建物準拠

入力されている計画建物形状から後退距離を自動算出します。

設定通り

敷地境界線コマンドの「建物のセットバック」で設定した値で後退距離を設定します。

考慮しない

後退距離を考慮しません。

境界線の位置で適合建物を作成するため、不利な状態になりやすいです。


「最適化」「建物準拠」の設定の場合、入力されている計画建物形状から後退距離を自動算出しています。基本的には敷地境界線からの水平距離で最短となる建物形状から位置を算出しますが、その際に各要素の「セットバック対象」の設定を参照しています。



例えば、「隣地境界線に沿つて設けられる門又は塀」にあたる要素については、「セットバック対象」のチェックを外すことで後退距離算定時に考慮されない部分とみなすことができます。


計算例

建物準拠

後退距離:2000 mm


塀は「セットバック対象」のチェックなしとしておき、計画建物までの最短距離が採用されます。

設定通り

後退距離:500 mm


敷地境界線コマンドで設定した建物のセットバック0.5mが使用されます。

考慮しない

後退距離:0 mm


【まとめ】

i-ARMの天空率コマンドでは、壁面後退の設定を選択肢で用意しており、簡単に計算結果を比較することができます。ぜひ設定を変えてお試しいただければと思います。


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