DRA-CADでは、建築計画の初期の段階から天空率計算によって、計画の妥当性、法規の適合性を確認できます。
平成14年11月13日に建築基準法の一部を改正する政令が公布され、平成15年1月1日に施行されました。この改正の目的は、仕様規定であったそれまでの斜線制限に性能規定を付与することにあります。
性能規定を付与するためには、該当する法規が新しく建てる建築物(以下、計画建築物と呼称)の何に関する性能を規定しているかを明確にする必要があります。
そのため、まず高さ制限の目的を「周辺環境の採光、通風等を確保するため」と位置付けました。そして、計画建築物が建つ敷地周辺のある位置(以下、算定点と呼称)において、高さ制限を満足している建築物(以下、適合建築物と呼称)によって確保される採光、通風などと同程度以上の採光、通風などが得られれば、現行の高さ制限を適用しなくても構わないとしました(建築基準法56条の7)。
そして基準法では「周辺環境で確保される採光、通風などの程度の指標」として[天空率]を導入しました(建築基準法施行令135条の5)。
算定点(建築基準法施行令135条の9、10、11で規定)において、計画建築物を建てた場合の天空率(以下、計画天空率と呼称)と、適合建物が建った場合の天空率(以下、適合天空率と呼称)を計算し、計画天空率が適合天空率以上であればいいことになります(建築基準法施行令135条の6、7、8)。
天空率による形態制限は、建築物の特定部分の高さを制限するのではなく、建築物全体として所定の天空率が確保されていれば制限を満足していると考えますから、建築物の形状に対する制限が大幅に緩やかになったことになります。
また高さ制限による規定と天空率による規定は高さ制限の種類ごとにどちらに規定を適用させるか選ぶことができます。
ある観測点から見ることのできる天空(空)の内、建物などに遮られることなく実際に見ることのできる範囲の割合を示します。視界を遮る物が何一つない状態を天空率100%とします。
実際の算定方法は次のとおりです。
①算定点を中心とした半径Aの半球を(天球といいます)を想定します。
②次に算定点から見える計算対象となる建築物について、その算定点から見た輪郭を底とし、算定点を頂点とする錐体を考えます。
③その錐体の半球面による断面の水平面に対する正射影図を描きます。この正射影図を天空図といいます(半球の底面の円(空全体の正射影)を含めた呼称です)。
④③の建築物の正射影図の面積をSとすると、
天空率Uは、U=(A2π-S)/(A2π)×100[%]で算出できます。
各高さ制限の適合建築物、算定点の位置の定義を以下に記します。
いずれの高さ制限の場合も計算対象となる計画建築物は、計画建築物の水平面への正射影図が、適合建物の水平面への正射影図に含まれる部分だけを計算対象とします。
[道路斜線制限]
適合建築物 | 敷地の内、道路斜線の適用範囲に含まれる部分(前面道路が複数ある場合、それぞれの道路が接する敷地境界線ごとに適合建物、算定点を設定する)。 |
算定点の位置 | 前面道路の反対側の境界線上を道路幅の1/2以下の間隔で等分割した分割点。 高さは路面の中心の高さ(両端点含む)。―(政令135条の9) |
[隣地斜線制限]
適合建築物 | 敷地の内、隣地斜線の適用範囲に含まれる部分(隣地に接する敷地境界線が複数ある場合、その境界線ごとに適合建物、算定点を設定する)。 |
算定点の位置 | 商業地域では、隣地境界線からの水平距離が12.4m外側の線上を6.2m以下の間隔で等分割した分割点(両端点含む)。 それ以外の地域では、隣地境界線からの水平距離が16m外側の線上を8m以下の間隔で等分割した分割点(両端点含む)。―(政令135条の10) |
[北側斜線制限]
適合建築物 | 敷地の内、北側斜線だけの適用範囲に含まれる部分(北側を向いた敷地境界線が複数ある場合、その境界線ごとに適合建物、算定点を設定する。北側を向いた敷地境界線が連続してある場合はそれらの境界線はまとめて適合建物、算定点を設定する)。 |
算定点の位置 | 低層住居専用地域では、隣地境界線から北側に向かっての水平距離が4m外側の線上を1m以下の間隔で等分割した分割点(両端点含む)。 中高層住居専用地域では、隣地境界線から北側に向かっての水平距離が8m外側の線上を2m以下の間隔で等分割した分割点(両端点含む)。―(政令135条の11) |
下図のような敷地に建物を計画する場合、例えば、東側の敷地境界線について改正後の法規を適用してみます。この敷地境界線は隣地に面していますから隣地高さ制限が適用されます。
「隣地高さ制限適合建物」は隣地高さ制限の形状を建物とみなした形状で、この敷地境界線の隣地高さ制限だけを受けている建物です。
「計画建物」は「隣地高さ制限適合建物」の範囲からはみ出しています。つまり現行の高さ制限には適合していないことになります。
改正後の法規に沿って敷地境界線で天空率によるチェックを行ってみると、敷地境界線における天空率の算定位置と適合建物および高さ制限適合建物と対をなす計画建物、それぞれの天空率は下図のようになり、計画建物の天空率の方が大きくなっています。つまりこの建物は敷地境界線に関しては高さ制限の緩和条件を満たしていることになります。
[計画建物の場合] | [適合建物の場合] | |
[斜線カット ]
適合建物を高さ制限の勾配と勾配の基準位置を指定して切断します。
[平面] | [逆円錐] |
[算定点作成 ]
天空率を算定する位置を作成します。指定した2点間またはポリラインを設定したピッチ以下になるように等間隔で分割し、算定点として円を配置します。
[天空図 ]
計算対象として「計画建物」か「適合建物」を指定して算定点を指示すると、現在画面に表示されている3次元図形を計算対象としてその位置での天空図と算定求積図を作成します。
また、「レイヤで指定」を指定すると、設定したレイヤの3次元図形を計算対象として計画建物、適合建物の天空率をそれぞれ計算します。
天空図では天空率とその計算根拠となる天空図を作図します。
[アクソメ図:隠面除去表示] | [2次元平面図] | |
算定求積図は天空率の算定根拠を示す三斜求積図を作成します。
[アクソメ図:隠面除去表示] | [2次元平面図] | |