DRA-CADでは、建築計画の初期の段階から日影計算によって、計画の妥当性、法規の適合性を確認できます。
計画建築物が建つと、計画建築物は周辺の敷地などに影を落とします。つまり日照を阻害し環境を悪化させます。そこで居住環境を重視した用途地域(住居系用途地域)では、日照の確保に関しても一定の規制が設けられています。これを日影規制といいます。
建築基準法の日影規制では、計画建築物の敷地の境界線から一定の距離だけ離れた地点の日影時間を何時間未満にしなければならないかを定めています。
[日影時間]
計画建築物の敷地の周囲のある地点が計画建築物によって、一日(規制対象時間帯)の内どれくらいの時間日影になるかを、計画建築物によるその地点での日影時間といいます。
[規制対象建築物]
地盤面からの高さが10mを超える建築物(第1種、第2種低層住居専用地域においては、軒高が7mを超える建築物または地階を除いた階数が3階以上の建築物)が日影規制の対象となります。
[規制対象時間帯]
日影規制では、真太陽時(一部の地域では中央標準時)の冬至日における8時~16時(一部の地域では9時~15時)の間を対象時間帯としています。日影時間は、この時間帯内で日差しが遮られている時間の総時間数ですから、最大でも8時間(6時間)ということになります。
[日影規制時間]
計画建築物がある敷地の境界線からの水平距離が、5m以上10m未満の範囲と10m以上の範囲について、それぞれ日影時間を何時間未満にしなければならないのかが、用途地域の種類やその地域の実状に応じて定められています。この日影時間の制限のことを日影規制時間と呼びます。
[測定線]
計画建築物がある敷地の境界線からの水平距離が、5m、10mとなる点を結んだ連続線のことを測定線と呼びます。日影規制時間が設定されている領域の境界を示します(異なる日影規制の地域が隣接している場合、その境界線も測定線として扱われます)。
[測定面]
日影規制では、日影時間を当該建物の敷地の平均地盤からの高さが1.5m(1階の窓中央を想定)、4m(2階の窓中央を想定)、6.5m(3階の窓中央を想定)、いずれかの水平面で測定します。この水平面のことを測定面と呼びます。
当該建物の敷地と周辺の敷地に高低差がある場合、平均地盤面からの高さではないこともあります。
本来日影規制の対象地域は面の広がりを持っています。しかし計画建築物の敷地周辺のすべての地点について日影規制を確認するのは大変です。現在の確認申請では、計画建築物が日影規制に適合しているかの確認は測定線と計画建築物による等時間日影線の関係をチェックすることで行ないます。
建築基準法施行規則第一条の三で指定されている表二の(三十)で定めてある「法第五十六条の二の規定(日影規制)が適用される建築物」に必要な申請図書は次の通りです。
①付近見取図
②配置図
③日影図(①、②とまとめている場合が多い)
④日影形状算定表
⑤二面以上の断面図
⑥平均地盤面算定表
他に必要な場合があるものとして、
⑦指定した点での日影時間(一般に測定線上)
地方公共団体が定める条例、指導要項に基づく申請用図書がある場合もあります。それらにつきましては当該機関にお問い合わせください。
計画建築物が、冬至日の日差しによって測定面に作り出す時刻ごとの影の形状を描き表した図で、計画建築物の特定時刻の影の形状を確認できます。
それにより、「計算に使われた影の倍率や方向が妥当か」や「影の形状が正しく作図されているか」といった補助的なチェックが可能です。
【時刻日影図】コマンドを実行すると自動的に計算を開始します。計算が終わると、時刻日影図を作成します。
[アクソメ図:隠面除去表示] | [2次元平面図] | |
[倍率表]ボタンをクリックすると、方位角・倍率一覧シートダイアログが表示され、倍率・方位角を表にして書き込みます。
影倍率について DRA-CADでは、影倍率を「最新建築環境工学[改訂版] (井上書院)」の「第3章 (3)太陽位置の計算(P.63~P.64)」で提示されている式を元にプログラムを作成しています。 方位角はこの式の「A」、影の倍率は太陽高度ℎのtanの値の逆数となります。 ある地点でのある時刻の(天球上の)太陽位置は、図1に示すように太陽方位角Aと太陽高度hによって決めることができる。太陽方位角Aは観測点Oと太陽を結ぶ直線の地平面への投影線と正南方向のなす角である。太陽高度hは太陽方位角方向の太陽と地平面のなす角度である。南中時は太陽方位角A=0であり、正南から西(午後)は+(プラス)、東(午前)は―(マイナス)の符号をつける。日の出、日没の時刻は太陽高度h=0であり、南中時(A=0)の太陽高度を南中高度という。 ある地点(緯度φ)のある日(太陽赤緯がδ)のある時刻(時角t)(真太陽時)の太陽高度hと太陽方位角Aは、三角法の公式により次式で与えられる。 太陽方位角を算出するときの注意。 sin A>0 , cos A<0のとき、 sin A<0 , cos A<0のとき、 その他の場合、 ここに、 |
測定面上における当該建物の影の影響によって描かれる等時間線を表した図です。確認申請用の等時間日影図の場合、等時間線の時間は日影規制時間を使います。
等時間線は、計画建築物がその周辺に及ぼす日影の影響のうち、日影時間が等しい地点をつないだ曲線で、地図の等高線、それも単独の山の周囲の等高線と大変よく似ています。山の周囲の等高線は、標高の低いものから高いものへと頂上に向かって順番に並んでいます。それぞれの等高線は閉じた曲線になっており、普通ある高さの等高線の外側にはその高さ以上の標高の地点はありません。
等時間線もまた、建物に近づくにつれて日影時間が短いものから長いものへと順序よく並んでいます。等高線と同様に、ある時間の等時間線の外側にはその時間以上の日影時間を持つ地点はありません。
当該建物が日影規制に適合しているかを確認できます。等時間線図に描かれた等時間線は当該建物の周囲の日影時間の分布を直接表現しているからです。実際には以下のような手順で確認します。
例えば、日影規制時間が「5m以上10m未満の範囲で5時間」、「10m以上の範囲で3時間」なら5時間と3時間の等時間線を作成します。そして、
の二点を満たしていれば日影規制を満足しているということになります(5時間の等時間線の外側には日影時間が5時間以上の地点は存在しない)。
【等時間日影図】コマンドを実行すると自動的に計算を開始します。計算が終わると、等時間日影図を作成します。
[アクソメ図:隠面除去表示] | [2次元平面図] | |
測定線上における日影時間を、「日影チャート」と呼びます。
等時間日影図だけでは、日影規制を満足しているかどうかの判断が難しい場合に使います。
等時間線の計算には必ず誤差が含まれていますので、等時間線と測定線が接近している場合は、上記の判断は難しくなります。
一方、特定の点の日影時間の計算は、ほぼパソコンの計算誤差程度で日影時間を求めることができますので、等時間線と測定線が接近している場合、接近している部分の測定線上の日影時間を計算して確認することで上記の判断を下すことができます。
【日影チャート】コマンドを実行すると計算を実行し、プレビューダイアログに日影チャートを表示して図面に貼り付けられます。
[プレビューダイアログ] | [2次元平面図] | |
|
【日影アニメーション】コマンドを実行すると時間ごとの太陽光の変化を表現する動画として再生します。また、AVIファイルで保存できます。