DRA-CAD:住宅省エネ機能の解説

住宅省エネの基本

住宅の省エネ計算のルート

住宅の省エネ計算には下記の2つがあります。

1.標準計算ルート

2.仕様ルート


ここでは「1.標準計算ルート」を対象に説明します。


省エネの方法として、「建築による手法」(外皮性能)と「設備による手法」(設備のエネルギー利用効率化)の2つのアプローチがあります。

1)外皮性能計算

評価対象住宅の部位ごとに計算した外皮面積や長さ、性能値、係数等を用いて外皮性能を求めます。

2)一次エネルギー消費量計算

外皮性能に加え、設備の情報により、一次エネルギー消費量を求めます。


DRA-CADでは外皮性能の計算を行う根拠となる、外皮面積や方位、部屋面積を求めます。

外皮の評価として、下記の2つの値があります。

UA値:外皮平均熱貫流率

ηA値:平均日射熱取得率


上記の値を求めるために、外皮の各部位ごとの面積と熱貫流率が必要になります。また基礎に関しては長さと線熱貫流率が必要になります。

省エネ計算(外皮性能)の手順

手順としては下記のようになります。

1.対象部位の仕様ごとの面積を求める

屋根、天井、外壁、基礎壁、ドア、窓、床、土間床、それぞれに対して、仕様ごとの面積が必要です。

基礎については周長(長さ)が必要になります。

また開口となる窓、ドアの面積も必要になります。

一次エネルギー消費量を求める際には居室・非居室の部屋面積が必要になります。

2.各部位ごとの熱貫流率を求める

断熱性能をあらわす熱貫流率を各部位ごとに求めます。基礎については線熱貫流率を求めます。

3.温度差係数を選ぶ

温度差係数とは、隣接する空間による温度差から、熱損失を補正する係数です。

部位ごとに決められている数値を選択します。

4.外皮平均熱貫流率を求める

上記の、面積・長さ、熱貫流率・線熱貫流率、温度差係数から、外皮平均熱貫流率UA値を求めます。


DRA-CADの住宅省エネコマンド

DRA-CADの住宅省エネコマンド群は、上記の1.対象部位の仕様ごとの面積を求めることを手助けします。

操作の流れ

DRA-CAD23の住宅省エネコマンドの操作の流れは下記のようになります。


1.部屋の入力

各階ごとの部屋の平面形状を入力します。

床、天井が外皮になる場合の面積を求めることができます。

一次エネルギー消費量を求めるための部屋面積(居室、非居室)になります。


2.建物の外周ポリラインの入力

建物の外周に沿って、ポリラインを入力します。

外皮となる外周に階高を掛けることで壁面積が求まります。

北方向を定義することで、それぞれの壁の方位が決定できます。



3.立面の作成

2.で入力した外周ポリラインと階高を指定して、壁の展開図を作図します。

そこから各方位ごとの壁の面積を求めます。


4.開口の入力

3.で作成した立面の壁の内部に、矩形で開口を入力します。

外皮面積に開口面積は含まれません。そのために壁面積から除外します。

また開口は別途日射熱取得率を求めるために必要です。


5.求積図と面積表

入力した部屋、壁、開口から求積図と面積表を作成します。

部屋から部屋面積表、壁と開口、もしくは部屋から、方位ごとの外皮面積表を作成します。


コマンドの解説

平面作図(住宅省エネ)

部屋(下図の赤)と外壁の外周(下図の青)の二種類の閉じたポリラインを入力します。それぞれ作図対象ごとに、作図するレイヤ名が決められています。



部屋

作図した部屋は面積表の対象となります。

作図するごとに部屋属性を決定しながら描いていきます。

部屋名は下図となる平面図から自動で取得できます。また個別に部屋名を指示することもできます。

※下図の平面図に部屋名を入力しておくとスムーズに操作できます。


外壁の外周

作図した外周ポリラインは、外皮の境界線になります。立面作図コマンドで壁の展開図を作図するときの下図となります。

自動で壁番号と方位が文字として記入されます。




立面作図(住宅省エネ)

平面作図で作図した外周ポリラインを指定し、壁の展開図を立面として作成します。

外周ポリラインに描かれた壁番号と方位をそのまま壁の下に複写します。

この壁はレイヤとグループ番号を変更しなければ、実際の壁の形状に合わせて、自由に変形しても良い。

この形状が外皮の壁面積として集計されます。

開口作図(住宅省エネ)

立面作図で作成した外壁の上に、開口を作図します。

開口の左下に開口記号が記入されます。

壁の面積は配置されている開口の面積分、引かれます。




作表(住宅省エネ)

下記の面積表が作成できます。

1.1階の部屋面積

2.2階の部屋面積

3.3階の部屋面積

4.方位ごとの壁面積

チェックした集計対象をそれぞれ囲むと、対応する求積図と面積表が作成されます。


「☑部屋から床と天井の面積を取得する」とすると、部屋属性に従って床または天井の面積を、部屋の面積から外皮として集計することができます。

補足事項

部屋属性

平面作図で入力した部屋は、所属レイヤにより下記の属性が与えられます。

部屋属性        説明

最下階        外皮となる床があるものして、下面の外皮を集計します。

中間階        外皮となる床、天井はありません。外皮として集計しません。

最上階        外皮となる天井があるものとして、上面の外皮を集計します。

平屋階        外皮となる床も天井もあるものとして、上面と下面の外皮を集計します。


外皮の方位ごとの面積集計を行う場合に、部屋面積から床と天井を集計するかどうかを、こちらの部屋属性で決定します。

作表(住宅省エネ)コマンドの「☑部屋から床と天井の面積を取得する」場合に、上面・下面の面積として集計されます。


下記の断面図の赤い線が上面(天井)、緑の線が下面(床)の外皮となる部分です。


部屋属性とレイヤ

この属性は、部屋が所属するレイヤ名で部屋の属性が決まります。


部屋属性        レイヤ名

最下階        住宅省エネ:平面図(最下階部屋)

中間階        住宅省エネ:平面図(中間階部屋)

最上階        住宅省エネ:平面図(最上階部屋)

平屋階        住宅省エネ:平面図(平屋部屋)


作図したあとにレイヤを変更することで部屋属性を変更することができます。

作図時にレイヤ依存で作図されているため、レイヤを変更すると表示色も変わり、どのレイヤに所属しているかがわかりやすくなっています。


グループ番号

下記の文字とポリラインはグループ番号で関連付けられています。

部屋名、壁番号と方位、開口記号


天井、屋根の勾配

平面図の部屋の中に同じレイヤで「勾配:XX/10」と書かれた文字がある場合、天井または屋根の勾配とみなします。同じレイヤにある線分と円で勾配の方向を示します。

集計作表時に勾配を考慮した面積で作表し、表の部屋名に(*)が付加されます。


上記の場合は、右のように4.5寸勾配でキッチン部分の天井(熱的境界)の勾配がある指示になります。円がある方が棟側(上)、ない方が軒側(下)へ下がる指定になります。


参考

このコマンドとドキュメントは下記のテキストを参考にしています(出典:国土交通省)


住宅省エネルギー技術講習テキスト 基準・評価方法編[第2版]

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/r2text_standard.pdf